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12話 彼の期待と、少女の純粋な気持ち

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-09-06 07:00:55

 その言葉が嬉しくて、俺は胸がキュンとなった。なに、その仕草はっ!? 可愛すぎでしょ……。俺が差し出したシュウマイを、そんなにも大事に思ってくれていたなんて。

「……卵焼きもいる?」

 つい嬉しくなって、もっと喜んでもらおうと思ってしまう。俺は、自分の弁当箱に入っている卵焼きを、箸で摘まみながらそう尋ねた。

 俺の言葉に、ヒナタは目を丸くして、驚いたように声を上げた。

「……え? わぁ……ユイトくん……の家の卵焼きの味!? ほしいっ」

 その反応は、俺にとって意外なものだった。しかも、いつものヒナタとは思えないくらい、ハッキリとした口調で自分の意思表示をしてきた。それが、俺の家の味が知りたいということで……。

 俺の家の味が知りたいということは、俺自身に興味があったってことだよな? 好意がなければ、そんなこと知りたいとも思わないだろう。俺は、ヒナタの言葉に胸が高鳴るのを感じた。

 俺は、さっきまで弁当箱を差し出してヒナタに取ってもらっていたが、今度は自分の箸で卵焼きをつまみ、ヒナタの弁当箱へと入れた。すると、ヒナタは顔を真っ赤にしてモジモジし、俺をチラッと見ては、またすぐに顔を赤くさせていた。

 その様子を見て、俺はなんとなく察した。間接キスを意識しているのだろうか?

 俺は、女の子とおかずの交換などしたことがない。いつもは男友達と弁当を食べていて、勝手に交換したり、嫌いな物を相手の弁当箱に入れたりしていた。そんな雑な扱いしか知らなかった俺は、今更ながら、ヒナタとの間接キスを意識してしまい、胸の鼓動が速くなるのを感じた。

 俺は、慌ててヒナタに言葉をかけた。

「あ、ごめんな。俺の使ってた箸で……あ、もう一つあるからそっちを……」

 そう言いかけたが、そのもう一つの卵焼きは、すでに俺が一口かじっていたことを思い出した。俺の言葉に、ヒナタは目を丸くして、しかし、その瞳には熱い光が宿っていた。

「え? い、いるぅ……それ、ほしいっ」

 ヒナタは、またもや意外な反応をみせて、フォークを俺の弁当箱へと伸ばしてきた。その積極的な態度に、俺は少し戸惑いながらも、その様子を見守っていた。

 彼女は無事にフォークで卵焼きを刺し、自分の弁当箱へ入れると、ニコッと愛らしい笑顔を見せた。その表情は、まるで宝物でも見つけたかのように、俺のかじりかけの卵焼きを愛おしそうに見つめていた。

「……ありがと、ユイトくん……」

 いつもの可愛らしくおどおどした口調で、ヒナタはお礼を言ってきた。その言葉に、俺の胸はまたもやキュンとなるのを感じた。

「ヒナタとは、初めて弁当を食べたけどたのしいな……よかったら、また一緒に食べたいな」

 実際に楽しかった。こんな風にヒナタと話す日が来るなんて想像もしていなかったし、彼女の意外な一面を見ることができて嬉しかった。それに、ヒナタが俺のことを少しでも意識してくれているのかもしれない、と思うと、それがさらに嬉しくて、もっと仲良くなりたかった。

「……え? わ、わたしと……!? わ、わわぁ!! う、うん。わたしも一緒に食べたい……あ、明日とか……」

 ヒナタは、俺の言葉に目を丸くして、パチパチと瞬きを繰り返した。そして、顔を真っ赤に染め、どもりながらも、嬉しそうにそう言った。その可愛らしい反応に、俺は思わず微笑んでしまった。

 弁当は、俺が早く食べ始めていたことと、ヒナタの量が少なかったため、二人はほぼ同時に食べ終わってしまった。食べている間は無言でも気にならなかったが、食べ終わってしまうと、途端に気まずい無言が二人を包み込んだ。

 俺はそう思っていたが、ヒナタは違ったらしい。チラチラと俺を見ては、顔を赤くさせて微笑み、楽しそうに見えた。しかし、俺に気を遣って傍にいてくれている可能性もある。

「ヒナタ、俺に気を遣ってくれて……残ってくれてる? 気を使わなくてもいいよ。俺は昼休みが終わるまで、ここにいるつもりだからさ」

 俺がそう言うと、ヒナタは小首を傾げた。

「……へ? あ、わたし、予定ないよ。約束もしてないし……わたしも……ここに、いようかなって……いい……かなぁ?」

 ヒナタの控えめな問いかけに、俺の心は温かくなった。

「そりゃーヒナタがいてくれたら嬉しいかも」

 とはいえ、このご褒美のような展開は、俺……また変な能力が発動してたりするのだろうか。そんな考えが、俺の頭をよぎった。

 ただ階段で転んだだけなのに、俺の周りで次々と奇妙なことが起こり始めた。それはまるで、俺という存在が、世界のご褒美イベントを引き寄せるトリガーになったかのようだ。

 もし、このご褒美イベントが、俺に備わった新たな能力なのだとしたら、これからどんなことが起こるのだろうか。そんな期待と、少しの不安が、俺の胸に去来した。

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